刀鍛冶の日々

土曜日の夢

 昨日の砂鉄集めの疲れか右手が痛み、やっと昼迄に反り付けをして、内面応力を抜いていた刀の歪み直しと荒削りを終る。仕上げのせんかけは手の痺れが和らぐ迄待つ事とする。
 明日は右手を使わないでも出来る短刀用のたたら製鉄の予定。弟子も居なく今日も一人仕事で全てをしなければならず、右肩は痛みと痺れに悩まされる。それでも刀造りは楽しくてしょうがない。
 一人になって忙しいが、以前の様に鍛冶屋クラブを造って、素人による古代包丁造りで、日本の古い鍛冶屋の伝統を学ぶ場所にしたいものである。土曜日の無料公開見学会と併せれば良いかも知れない。まだ体力もあり一人や二人の面倒位は見る事が出来る。

3月21日の事

 遠く東北地方の方より短刀の注文を受けている。最後を決するのは肌身離さず持つ短刀である。相手を倒すか、自刃するか、短刀の役割は二通りの役目がある。
 國家存亡の時、一般の國民として持てる武器は刀剣以外に無い。その強い不屈念を持つ受注者の短刀を造る為に、片道5時間を要する場所に、粘りが有って斬味に勝れる短刀用の砂鉄を集めに行った。砂と選り分け水洗いをして乾かして近日中に鋼を造りたい。
 納める日数は十分に有るので、造り直しの太刀を先に仕上げてから、ゆっくりと納得のゆく短刀を造りたい。

反り付け

 今月前半頃より非常に硬い玉鋼を急いで鍛錬をした為か、右手が痛み痺れる。
 平田君が荒火造りを手助けしてくれたので、今日は仕上げ打ちと反り付け。研師さんに研ぎの後半になって傷が出た事を知らされ、急遽打ち直しを始めた刀である。一生懸命造った刀であるが、製鉄よりの手造りであるので欠点も出る。
 納入日迄日数はあるが、研師さんは順番が有るので早く造らねばならないし、私も次の作刀予定がずれて来る。
 大きな玉鋼を一人で切断した痛みが尾を引く。以前にたたら製鉄で造った大きな玉鋼の在庫も沢山有るが、平田君のアルバイトが休みの時に手伝ってもらって切断しなければ、右手が痛み仕事が出来なくなる。

来客

 昼迄包丁用の玉鋼造り。
 途中来客有り。山梨県で自家製たたらで、玉鋼を造っている刀工。御名前は知っていたがお会いするのは初めてである。
 今、砂鉄から鋼を造っている刀工は全國で数名。日刀保玉鋼はアルミナを含んでいるので鍛伸性に劣り、硬くて、もろく実戦刀には不向きな事を知っている方である。晩年になって同志に会えた事は嬉しい。僅か1時間程のお話で、時間は少なかったので製鉄の詳しい事は余り語り合えなかったが、長年たたら製鉄をされているので同じ地金であると思う。
 午後3時にたたら製鉄の跡片付け。25キロの砂鉄で7キロの玉鋼が出来る。九州の砂鉄と中國地方の砂鉄の混合で、炭素量は包丁に適している。

見学会

 午後の無料見学会に備えて炭切をするが、連休の為刀剣博物館を目指して伝習所の前を通る人は多くなる。
 午後は次々と予約の方が訪れ、展示場でたたら製鉄と作刀の説明。鍛錬場で私がベルトハンマーを使っての折り返し鍛錬と説明を行う。
 弟子も去って一人仕事での無料見学会なので少し迫力不足である。見学会は今日午後のみであるので、明日に備えて夕方にはたたら炉の解体と塗り直しをする。
 春からは例年包丁製作依頼が多くなるので、包丁用玉鋼も造り置きをしなければならない。全てを一人で行うので忙しいが、直接日本刀造りを見て、日本の文化伝統を肌で感じてもらえたらそれで良い。

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