刀鍛冶の日々

最後の日

 去り行く弟子が銘切を終えて、これで36年間に及ぶ後継者育成も全て終わる。
 文化庁の刀工試験合格者14名中何とか6名が刀造りを続けている。この中でも今年は2名が鍛冶場を建設して、専業の刀工と成る予定。しかし生活が成り立つかは不明である。
 日本の伝統文化を守る事は並大抵の信念では出来ない。刀と心中する気持ちが無ければならない。
 私に伝統を受け継ぐ使命が有れば何とか道を切り開ける事を、金屋子の大神様に拝み続け弟子を育成した。神様の御蔭と深く感謝して、月参りを続けている。
 独立する弟子も、そうでない弟子も、鉄の祖神金屋子神社に参拝して、民族の魂を受け継ぐ赤心報國の誠を祈らねば、刀鍛冶には成れない。
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刀身、中心仕立て

 朝より土曜日に焼入れをした脇差の反り直し、刀身と中心仕立てを終える。
 1月、脇差三振りを製作するが、最後三振り目の安山岩中の砂鉄を以ての脇差が1番良く出来ている。少し寝かして内面応力を抜く事とする。
 弟子二人は明日銘切を終わり、研師宅に刀身の一部を研ぎ上げる窓開けに出して作業を終え、2月9日に登録をすれば伝習所を終える事になる。

納税準備

 休日なれど平成28年度の税務署に提出する決算書作り。1年間の収支を月毎、種目毎に電卓で計算。
 領収書の計算だけで5日間を要し、全てが終わると1週間を過ぐる。個人事業だが小企業並みの運営を一人で切り回している。
 納税は國民の義務であり、税金で國家は成り立つものである。
 弟子が多くいたので炭代等多くの経費がいり、運営は並大抵ではなかったが良く切り廻せた。
 平成29年度は2月より弟子の給料も不要になるし、無料公開も止まり余分な炭代、電気代、水道代もいらなく、軽く200万円は浮く。その分体を労り、休日も取れる。1日も長く元気で、今年独立する弟子の手助けもしてやりたい。
 世間では見るだけの日本刀ブームで有るが、刀鍛冶への製作依頼は一部の刀工のみで、その他の刀工は生活が出来ないのが現状である。
 弟子は一部の刀工に入れる様、日夜製鉄から刀剣造りに没頭し、折れず、曲がらず、良く斬れ、尚地金の美しい武術、美術相兼ねる真の日本刀を造れば必ず注文に道は開かれる。
 何時も魂は敬神愛國を忘れず、製鉄の祖神「金屋子様」に神拝する事である。

焼入れ二振り

 土置きをすまして夕方6時、日暮れを待って山本君と二人で焼入れ。
 14年前伝習所を二人で設立し、今元の二人に戻った。末永い付き合いを話して金屋子神を祭る神棚に神拝して、焼入れ成功を祈願し焼入れ。
 二人共に土置き通りに焼入れが出来て一安心。気になっていた大肌の地金も焼入れをすると見えなくなっている。
 来週は姿直しの予定。

脇差

 右腕の痛みも治ったので、今日は先日の脇差にせん、やすりをかける。
 明日の夜、山本君も焼入れをするので一緒にする予定。
 火山系安山岩に産出する砂鉄で包丁を試作して有ったが、地金の肌模様が少し大きすぎるが焼入れをしてみなければ、この板目肌が目立つか、目立たないか判断出来かねる。まだ時間も有るので、不向きなら再度砂鉄を変えてみる。
 数え年71歳になると、後世に残る作にも大変気を使う。後何年現役を続ける事が出来るか判らないが、人生最後のつもりで一振り一振り造っている。

脇差と短刀

 辞める弟子の脇差と短刀は、時間をかけて直せば直す程悪くなるが手伝わない。指示だけ。
 刀工として伝習所では13番目と14番目の最後の弟子である。
 6年から9年間学んだ最後の刀剣として、刀工の名に恥じない様に全力を尽くして欲しい。

最後の仕事

 去り行く弟子の仕事を見る。刀身は蛇が這った様に曲がり、捩れている。刀工として最後の仕事なので、欠点を指摘して正確に直す事を求める。
 今夜の焼入れは平田君に任せて帰る。
 只一人残る事になった平田君は、誰も居なくなった伝習所に留まり頑張るとの事。嬉しい弟子の一言。

秋山君退院

 昨日無理をした火造りで、右腕の痛みと痺れで作業を中断して、たたら製鉄を行っている平田君に後を任せる。
 大怪我をして70日程になる秋山君から明日退院との電話有り。足の骨も今だ繋がらず、ギブスをはめた状態で当分は元に戻らないが、保険の関係で退院となり自宅治療の様に思われる。それにしても左足切断でなくて何よりも嬉しい。
 秋山君は伝習所で一番古い弟子であり、一門中技術は一番上手で信頼している弟子である。
 平田君や秋山君の様な若くて実力の有る、情熱を刀に傾ける者が伝習所を背負えば嬉しいのだが・・辞める弟子は辞めて行くし、力の有る弟子は独立し専業の刀工を目指す。
 独立をしても生計が成り立たず、赤貧洗うが如くの時代も有る。それでも刀に対する情熱を失わない者が最後に残り、真の刀工となる。自分が日本の伝統を守る気概が有るや否やである。
 秋山君が一日も早く伝習所に復帰する事を、一日千秋の思いで待っている。

神拝

 昨夜買って置いた焼きそばを温めて朝食を済ます。
 朝より脇差の素延べ、火造り、夕方には反り付け迄進める。
 一門を去る二人は2月9日の登録日に間に合えばよいので、今日から自由出勤として、朝の神拝は私のみとする。朝の神拝は赤き心を祈る一日の始めである。赤心報國の誠なくして神拝は無礼である。
 浅学ながら神道國学の上に立って、民族の魂を打つのが信条である。

1月の22日

 妻が朝早くから伊勢参りへと出掛けたので、何十年振りかで日曜日の朝8時迄朝寝をする。
 刀造りにかける情熱と努力の無い弟子が、一門から離れて行くのは当然の成り行きである。
 今迄弟子育成に注いだ期間は36年余に及び、刀工試験に合格した者14名、途中辞めも数多し。残念ながら専業の刀工として、現在生計の成り立つ者は一人としていない。
 趣味や名誉欲が心底に有り、日本の伝統文化への深い信仰心が無ければ、民族の魂を打ち続ける事は出来ない。それでも今年は2名の弟子が土地を購入して、鍛冶場建設へと動き出した。
 伝習所には平田君が住み込みで、週2日のアルバイトをしながら10年刀造りをしている。大怪我で入院中の秋山君も復帰のチャンスはある。
 僅かに残った小さい芽に期待を託している。

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