刀鍛冶の日々

焼刃土造り

 刀の刃文は通常粘土、砥石の粉、炭の粉で作られる。刀身に自分が思う様な土置きをして、小粒の焼入れ用炭で800度を限界に刀身を均等に焼き、水中に没すれば刃文が出来、焼入れされた部分は硬く武器となると共に、地刃の働きで美術品となる。刀工が焼刃土の配合をどの様にしたのか又地鉄の鋼を何処から入手したのかによって個性が出る。
 焼刃土は一回に3年間程の量を造り寝かせて置く。これで現役時代は十分有ると思う。20年前友人の備前焼作家から頂いた耐荷力の強い土もこれで終わる。
 微熱と咳が続き包丁の鍛錬を控えていたが、納期が近づくのに体調悪く今日も体力的に楽な焼刃土造りで一日を過ごす。
スポンサーサイト

御守短刀

 今年三振り目の出生記念短刀の中心仕立てを済まして彫物師へ出す。注文者の希望で体配の大きな方の短刀にしたので、寸も長く身幅も広いので彫物を入れて空間を埋め地刃のバランスを取る。
 為打ちの場合は中心に切る銘が多くなるので大きな短刀が楽であるが、女性用の嫁入り短刀も小さいながら姿も優しく好みである。いずれも親が子の為に日本人の魂を贈った記念の作である。その子が人の親になった時に親の気持ちが判る。  日本刀は民族の魂である。その魂が日本の歴史を守っている。刀を造っている弟子達もその心で百錬の鉄を鍛えねばならない。

最近の地金

匂い出来と沸出来は焼入れ温度ではなく砂鉄の質が大きく影響する。しかし匂い出来用の砂鉄でも製鉄と鍛錬方法で沸が地にも刃にもこぼれる程に着く。沸出来の砂鉄も少なく匂い出来の砂鉄を高温度、高鍛錬で試作の最近。今朝も試作の包丁を研いで眺める。帰宅途中研ぎ師宅にて下研ぎを見ると包丁の出来と全く同じである。
 砂鉄は中國山地の真砂砂鉄であるので本来ならば備前伝の出来だが、製鉄方法と鍛錬で相伝備伝の出来である。殆どの砂鉄が自分の思う地金になっている。たたら製鉄を教えて頂いた、故今泉先生は何と思うだろうか?もう親の年は越えているし一振り一振りが最後だと思って打っている。体力は落ちているが作刀意欲はまだ上昇している。やはり地金である。次が刃文。
 最近は毎日が暑いので2時間を限度に鍛錬。仕事は予定より遅れているが後2ヶ月もすれば涼しくなるので、体に気を付けて無理をしなければまだ2.3年は現役が続けられる。
 それ迄に弟子を一緒に卒業させたい。

長い一日

 微熱と咳き込みが続く。抵抗力と回復力の落ちた事を感ずるこの頃。
 今日は川砂鉄を集めに行きたいと思っていたが大事を取って一日横たわる。
鍛冶場は休みにしているが予約や問い合わせの連絡も結構忙しい。
当分先まで注文は有るので今以上の地金を造り出すには砂鉄の配合を考えなければならない。研ぎ上がった二振りの刀の地鉄と刃文を見、砂鉄の分析表と配合の比率を考える。
 今は自分の個性を刀にどの様に表し未来に残すかが問題である。他の刀工と区別出来る僅かを追及して考える長くて短い一日。

歩み

相変わらず咳は続き弟子の鍛錬、素延べ、火造りを見て過す。それぞれの個性は有るが経験が浅いので手間取ったり、指摘しなければならない所も出る。今だ独立していないので専業並の腕は望めないが早く上達しなければ独立出来ない。
 平日はアルバイトに出るので仕事量が少なくどうしても技術の進歩が遅くなる。難しい問題であるが両立させる意思が有るか無いかである。努力しなければ結果は出ない。現代刀程度では並の刀工で終わる。それ以上の古刀に迫る刀を造らなければ専業の刀工として生活出来ないのが現実である。
 自分に厳しくなければ絶対に技術の向上も人格の向上も無い。喉が痛みて止まぬ。

撮影当日

 目覚めると喉から左耳迄も痛むが、10時30分に刀剣博物館の刀を撮影して伝習所にスタッフが来る迄、砂鉄投入は続き解体すると10キロの玉鋼が出来ている。切断して梃子棒に鍛接すると昼、急ぎて昼食、交代で鍛錬、素延べ、火造り、土置き、焼入れと進むが、微熱と喉の痛みが続き疲れた一日であったが、全員7名が協力して何とか撮影も終り、7月の大きな行事も終り一段落。

撮影前日

 喉の痛みと咳き込みが激しく病院で抗生剤をもらい1日寝るが喉が痛くて話辛い。撮影の用意が早めに出来ていたので安心して休めたが、明日もこの体調では仕事が出来ない。
 夏場のたたら製鉄と折り返し鍛錬は無理だと判っていたが、弟子達の作刀風景を1年間機内で上映される事はこれから独立して行く弟子達にとって、非常に大きな効果が有ると思うので無理を承知で受けた。
 刀工試験に合格後何年も修行しているが、独立しなければ注文は取りにくい。独立した時に映像で自分の仕事風景を見せるのも必要であり、自分の作品も見てもらう為に一振りや二振りの刀は要る。今は卒業を控えての刀造りの時機。明日も暑いが頑張ってもらいたい。

修了書

 一夜寝て目覚めると喉が痛く風邪を引いている。刀や短刀の影打ちの予備は有るので、代わりを新たに研ぎに出したり火造りをする。今年の夏はゆっくりと思っていたが新たに注文も二振り入る。
 午後は火を使う仕事は熱中症の事も有るので平田君も中止する。焼入れのすんでいる包丁を研いで過ごす。この体調では撮影が危ぶまれるが、谷口君の刀工試験合格の証明である修了書が文化庁よりやっと届く。入門6年間の努力がやっと実り来週は文化庁へ作刀申請書を出す予定。初の作は無理なく短刀を造る予定。既にたたら製鉄で鋼を造り準備は出来ている。
 10日前に地元産松炭が20俵入荷したがもうとっくに無くなっている。丁度岩手県より炭が出来た連絡が有り注文する。1年間に15トン程の炭を消費するので、金策も忙しいが刀の注文が途切れる事が無いので何とか伝習所も持ち堪えている。在庫の炭も200俵、2トンも有るので炭の入荷が多少途切れても安心して刀を打てる。砂鉄も1年間の備蓄が有るので弟子達は早く上手になってもらいたい。

気落ち

 刀の土置きは気温の低い朝にしなければ土が乾くので、日中の夏場は出来なく早朝に撮影用の刀に土置き。谷口君が焼入れ用に小粒の炭切。
 午後は平田君も明日の心鉄鍛錬用の炭切。種々の準備で今日も終わると思っていたら、研ぎ師さんから連絡が有り刀に割れが出ている。丁寧の上にまだ丁寧に鍛錬をしており、刃文も気に入っていただけに心は折れる。手仕事だけに欠点が出て切断する事は年間二振りや三振りはどうしても出る。その為に一振りの注文に対してもう一振りの影打ちを造り万一に備えているが、心には大きな空しさが残る。それでも注文主の為に後世に家宝として残る刀を打ち続けなければならないのが刀鍛冶で有る。
 納入迄まだ時間は有る。もう少し頑張ってみる。今日の事は寝て忘れる。

為打ち

 3連休は忙しかったので代休として今日は休み桃農園へお中元を注文しに行く。そして病院。昼前に研ぎ師宅へ。やっと予定終了。午後はクーラーを入れてテレビを見て過す。
 夕方には同郷の刀剣商の方が3年前の私の刀が刀剣市に出ていたとの事で購入され持参。この3年間に三振りだけ注文者の名前をいれていない刀が有る。注文者の銘を入れて置けば末永く家宝としてその家に代々受け継がれるが、そうでなければ残った家族が手離す事になる。10年程前は斬試刀の注文が多く、安価な刀には名前を入れる為打ちはしていないので刀剣店に出され、今年は3人の方が刀剣店から私の刀を購入している。しかし後世迄家宝として残る刀造りをしているので、この2年余りは注文者銘を入れた注文主の注文しか造っていない。
 弟子も全員刀工資格を取ったので育成費も不要となり、経済的に楽になったし時間にも余裕が出来たので、あと少し頑張った作を残したい。

 | HOME |  »

FC2Ad

プロフィール

上田

Author:上田
FC2ブログへようこそ!

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

訪問者