刀鍛冶の日々

炭入り

 今日も県内の炭窯より20俵の松炭が入り6月は合計240俵の入荷で鍛冶場は炭で溢れる様になって来た。炭受け入れの為休日を振り替える。溢れる炭減らしの為に谷口君と2人で5俵の炭を切り、多くの小粒の鋼を降し金に纏めて土曜日に使う公開鍛錬用の鋼を造る。
 土曜日は技術協会より20名の見学予約も入っており、炭も十二分に有るのでたたら製鉄も行い、希望者には砂鉄投入もして頂き、炉を解体して出来た玉鋼を見てもらいたい。
 やっと松炭も順調に入荷する様になり、これで弟子達も刀造りも炭を心配しなくても良くなった。私も長大な刀を造る為に炭の確保をしていたが、何時までも入金が無いので手持ちの炭も弟子達に使わせる事としたので、弟子達の刀造り用の炭は有り余る程になって来た。
 7月は毎週多人数の見学予約も入っているので炭の在庫も減るだろう。
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変更

 日本式古代製鉄方法たたらは粘土で箱型の炉を造り玉鋼を造って来た。製鉄時に粘土の壁は溶けて薄くなり玉鋼の成長を助けている。島根県の「日刀保たたら」がこの方法である。隣町に製鉄会社の子会社が、耐火煉瓦や耐火モルタルを製造して製品を近代製鉄会社を支える炉材として販売しているが、近代製鉄の炉には粘土が使用されていなくても鉄は出来る。
 この事を考え昨日は粘土の代替えとして、モルタルと川砂を同等に混ぜて玉鋼の出来る炉床部を造り試験をし、今日も秋山君が同じ方法で製鉄。モルタルだけでは毎回玉鋼が炉床の壁に溶け接着し苦労してやっと取り出すが、今日も鉱滓は通常よりも多く出て、玉鋼は簡単に取り出す事が出来て大助かりである。
 玉鋼の歩留りは炉床に真砂土を使う時よりも悪いが、気分的にも体力的にも楽なのでこの方法に変える事にした。

炉材試験

 たたら製鉄を行う上で大事な事は第一に砂鉄の品質の問題。これは現代の科学分析を利用出来る。第二は炭の火力問題。これも技術ある炭焼釜を見付ければ解決出来る。一番難しいのが炉に使う土の問題である。自分の山林が無いのでホームセンターの植木用の真砂土を利用するが、思う様な土が手に入らずたたら研究をしていて悩みである。
 今日のたたら製鉄の炉には市販のモルタルと川砂を混合して実験する。炉の側壁は程良く溶けて鉱滓は多く流れ出すので、羽口は詰まらず玉鋼は炉底迄落ち側壁と分離するので簡単に玉鋼を取り出す事も出来、ホームセンターで真砂土を買わなくても良いので手間暇が省ける。

配合

 やっと注文の包丁2本を研ぎ終える。2種類の頂き物砂鉄を配合を替えて包丁にするが、斬味は全く同じで鍛肌が目立つ物と無地の地金と大きく異なる。注文の短刀を造るのに包丁で地金の試験をしたのだが、美術面で地金の纏まりに欠ける。この砂鉄は一種類の単独で地金を造った方が良いかも知れない。夕方迄時間も有るのでたたら炉を塗り直し、明日少量の砂鉄を吹いてもう1本包丁を鍛えて地金の確認をしてみたい。
 この砂鉄が多量に入手出来る事になったので、素材の無い弟子は助かる。谷口君も纏めて3本の包丁を焼き入れる。彼も梅雨明け迄にもう1回はたたら製鉄をして玉鋼の在庫を増やしておかなければならないし、たたら製鉄も私の元気な内に覚えてもらいたい。
 最近は急激に体力が落ちた事を感じるので、無理をしないで弟子達の仕事を見ながら一呼吸したい。

地金について

 今弟子6人が刀造りに挑戦している。刀工資格の古い弟子も新しい弟子も混在。早い弟子はもう刀に成っているが他は鍛錬中。刀工資格を持っているのでどんな刀を造るかは本人次第。失敗しても全て経費は本人持ちだから気は楽でじっと仕事を見ている。
 刀の大きな失敗は地金の処理がまずく、大きな傷が出て切断になる事である。日刀保玉鋼は炭素量や不純物の有無に応じて等級別に選別されているので、値段の高い物を使えば殆ど傷は出ないのでこの点は勝れている。
 しかし自家製たたら設備は小さく鋼に粘りを出すのに、低い送風量で吹いているので鋼の中に鉱滓が残るので、最初に高温で真白くなる迄沸かし取り出した時は、表面の酸化鉄が燃えて湯玉となり垂れ落ちる様でなければならないが全員の温度は低い。刀に傷が出なくても鉱滓が多く残ると鍛肌が醜くなり、斬味も落ちる。それに一回の鍛錬量を多くすると鋼の中迄沸きにくくこれも失敗の原因となる。弟子は少しずつ私の鍛錬と違う方向になって来たが、それで刀になるなら良いと思って見ているが、刀匠会講習の影響が大きく出ている様である。

失敗に学ぶ

 今日は疲れも取れたので仕事を始めようとしたら、弟子が刀の素延べ途中を持って来る。先週は無かった無数のしなえが刀身に出ている。原因は炭素量が高く粘りが少ない為と思われる。本人は大きく落ち込んでいるが初めて造る刀が、欠点も無く出来る事はない。何本も何本も打ち直してやっと刀造りが学べるのである。炭も鋼も多量に要る。毎回々刀を造る度に落ち込み刀工を辞めるのが常である。それを乗り越えて刀を専業で生活出来るのが刀工である。 
  私の元でもう13人も刀工試験に合格したが、誰一人として今だ専業の刀工はいない。刀を造る技術が無いのか、それとも情熱が無く趣味の部類かは知らねど、刀一途に研究を積み重ねる以外刀工になる方法は無い。

筋肉痛

 朝目覚めると体中が痛くて動けない。2日間無理をしてたたら製鉄を一人でやり通した事が原因。平日は弟子がアルバイトをして週末2日間で刀造りをしているので、以前の様にたたら製鉄の手助けを求める事が出来なく、一人仕事になりどうしても無理になる。老いたなと最近は思う様になって来た。幸い休日なので昼迄寝て過す。夕方には目の痛みも取れる。
 昨日は今年3人目の入門希望の青年が伝習所を訪れるが、この年になると弟子入門は肉体的に無理になる。やはり國が施設を建て刀工養成所を構えないと、日本刀製作の伝統を守るのは難しくなる。
 今日も映画会社と日本刀製作を海外の方にPRする為に電話で35分も下見前の打ち合わせをする。日本刀は日本を代表する伝統工芸であり、民族の魂である。本来ならば民間企業でなく國が紹介しなければならない番組ではないかと思う。
 NHKの番組では何時もたたら製鉄で日本刀の素材、玉鋼は島根県出雲町の日刀保たたらでしか造られていないと放送されるが、個人でもたたら製鉄で日本刀を造っている事を海外に知ってもらうには良い機会かも知れない。

今日もたたら

 午前10時30分迄平井さんに沸かしを見学してもらう。予定を変えてたたら炉の塗り直し。平井さんが10キロの松炭で1時間程折り返しの練習後、秋山君が刀の鍛錬をするのを見ながら砂鉄投入を続け、夕方には大きな玉鋼を昨日に続き製作。成功の原因は炭以外に無い。秋山君も来週はたたら製鉄の予定。火力の有る炭が在る間全員が夏場に使う玉鋼を造れば良いと思う。
 炭の良し悪しは見た目だけでは判らないし全て炭焼き屋さんの技術であるので、当方ではどうにもならず良い炭屋さんと出会いが有るか無いかである。昨日に続き今日もたたら製鉄をしたので目は痛み通しである。
 明日はゆっくりと目を休めて包丁の研ぎに備えたい。谷口君、金沢君は病欠、菊池君は包丁の研ぎ。

火力

 昨日に続き今日は炭が岩手県より届き、満杯なので急遽予熱なしで炭減らしの為たたら製鉄に変更する。
 いつもは歩留り2割未満のチタン含有量25%砂鉄で全く期待せずの操業であったが、たたら炉から炎が高く出るし石灰を多量に入れても不純物のノロは通常出にくくて羽口を塞ぐのだが、1300度に達したノロは水の如く流れ調子も良く、2割位かと思い炉を3人で解体すると3割の歩留り、12キロの玉鋼が形良く纏まり出たので見本とする。全員の評価で一番の原因は昨日入荷の炭に火力が有ったとの結論に達する。県内産の炭は当り、はずれが有り岩手産の炭の様に安定していない。

炭入り

 朝5時から炭受け入れの用意。鍛錬所は炭で満杯になっているので値段と地域別に並び替えて置かなければならない。用意を済まし火床に火を入れて鍛錬の用意をしていると2トン車で炭入荷。後は10月中旬迄農作業があるのでこれが最後の炭との事。岩手県の炭も明日入荷の予定。
 春から毎月40俵入荷している県内の炭屋さんも来週位入荷の予定で、炭の置き場所にも困っているので谷口君と2人で鍛錬をして炭の消費を急ぐ。昼迄には炭2俵を使って包丁Ⅰ本分を鍛える。谷口君も同じく炭2俵を使って鍛えていた。上手な沸かしである。
 谷口君も地域によって火力の微妙な違いが判って炭の評価をする様な職人になって来た。平日も毎日修行するので1年もすれば兄弟子を追い越す技術になると思っている。早く刀工許可が出れば良いのだが、待ち遠しい。 夕方にはたたら炉も塗り雨天になればいつでも製鉄が出来る準備にしてある。
 岡山は本当に晴れの國で雨が少ない。たたら製鉄をすれば炭10俵は消費出来るのだが・・土、日は刀を造っている弟子が来るので炭10俵は位は使うだろう。

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