刀鍛冶の日々

赤目砂鉄

 午前中は刀の皮鉄と心鉄を合わす造り込み。皮鉄の炭素量が高いので火花試験をして炭素量の少し低い心鉄にする。皮鉄と心鉄を鍛接した時に炭素移動が起こり皮鉄の炭素量が減る事も科学的に証明されている。日刀保玉鋼を使用する現代刀工にも心鉄を入れない手抜きが多く行われているが、美術刀は見るだけの刀だが本当の日本刀は武器である。斬られた時に折れる危険性が高い。日本刀は折れない事が一番大事である。
 午後は先日頂いた赤目砂鉄の選鉱。30%が赤土であるので砂鉄も赤い砂鉄である。赤目砂鉄を吹くと銑になりやすいので真黒な真砂砂鉄を加えて鋼に成る配合にする。おそらくこの赤目砂鉄は兵庫県の千種川産であると思う。
 砂鉄は元々炭素量の多い銑になる砂鉄と鋼になる砂鉄の2種類に別れるものである。砂鉄だけを多く持っている刀工もいるがたたら製鉄が出来ないのでは宝の持ち腐れである。
 御客に砂鉄を見せて自家製鉄を唄い実は日刀保玉鋼で刀を造っているのではなかろうかと思う。そんな刀工が多いのである。
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短刀鍛錬

 朝から短刀を鍛える。分析ではチタン、マンガンが通常より多くケイ素が少ない。5回の折り返し鍛錬では海藻の様に鋼の表面に酸化鉄が浮かび出るので、強い沸かしで酸化鉄を燃やしてゆくので目方は相当減る。午後は鉄の含有量の多い鋼を鍛え6回目で2個を合わして10回鍛える。鍛肌は大きな板目肌が連なり、小さな板目肌が浮き出る面白い東北地方の地金である。後日の焼入れとする。
 東北の餅鉄で鍛えた鋼の分析表を見るが砂鉄と磁鉄鉱では内容に大きな差が出ている。これも後日古刀の切断分析表と比較したい。
 親方をしていると種々用事も多いのでゆっくりと勉強が出来ない。

朗報

 先日から松炭を求めて手を打っていた中で一軒の連絡が有り午後から現地へ出掛ける。専業の炭焼き屋さんではなく小規模であるが少しでも松炭を焼いて頂けるとその分だけ助かる。雑木でも松でも焼き方は基本的には同じであり近くに松の原木が有るや否やである。幸い今日の現地には松が多く生えている。今や日本刀造り用の松炭は全國的に不足して刀工が困っている。御好意に深く感謝申し上げます。もう一軒は専業の炭焼き屋さんであるが今日も返事は無いが、一釜全て買い取りますと約束しているので期待は持てそうである。
 岡山県も山間部で人口も減り仕事も無い。村興しに老人クラブ等で荒れ果てる山林を綺麗にして炭を焼けばお互いに助け合えるのだが。

休日出勤

 本来は休日で納税準備をする日だが大高君一人に出来ないので顔を出す。素延べ完了の確認を受けず勝手に棟打ちを始めたので素延べのやり直しをさす。夕方には刃の荒打ち出しを済ますがやはり刀身が捻じれているので明日再度手直し。最近は妥協を許さないので疲れたのか大高君の顔が少し小さくなった気がする。一日真っ赤に焼けた鉄を手鎚で打ち続けるので、いくら若いと言っても半月以上毎日続けると体重も減ると思う。帰り際に「上手くなったよ」と言って帰宅。
 休日でも谷口君は私が明日心鉄を鍛える炭を切り揃えてくれる。岩手県に電話をして注文の松炭を半分だけ都合をつけてもらい助かる。一振りの刀を打ち上げるのにたたら製鉄に5俵、刀造りに25俵、合計30俵の炭が必要で有り、弟子7人のすみを入れると200俵を要す。大高君の練習用炭が一番多くいるので他の弟子は困る。
 しかし努力もしないで9年間を過ごしたので受験迄の炭はどんな事をしても用意するので、死ぬ気で自分と親の為に頑張れ。今が人生の岐路である。

日曜日

 昨日から平日はアルバイト、土、日曜日に刀造りに励む弟子3人が短刀の焼入れに取り組んでいるが、思う様な刃文にならず今日も焼入れ。しかし今春5月に刀工受験に臨む予定の2名は日曜日も平日も無く脇差造り。谷口君の焼入れをした刃文は良く纏まり鍛冶研ぎも終り明日は中心仕立てへ。大高君は半月も堂々巡りの仕事で仕上がらず。中止をさして新たな脇差の火造りへ進ます。 
 一生に一度位は真剣になって自分の人生をかけて励む事も必要だろう。今日の砂鉄は頂き物であったが出来た鋼は粘りが有るので刀の心鉄にしたい。

心構え

 弟子も多く気が散るので鍛錬は中止として注文の包丁を研ぐ。午後は弟子の仕事を横目に見ながらたたら炉の解体、塗り直し、炭切。先日も弟子が刀の鍛錬途中を通路に投げ出していたので厳しく注意したが、今日も通路に投げ出しているので再び注意となり激しく怒る。我々は武士の魂、民族の魂を打っている。その玉鋼を2回に亘り通路に投げ出すその心に怒るのである。刀工としての精神に欠けている。それが雑な仕事に繋がり刀工試験に何度も落ちるのである。
 日暮れて皮鉄と心鉄を合わせる造り込みも非常に雑である。刀身に大きな膨れが出ているのも気付かない。細心の注意を要する部分であるが全く欠けている。おそらくこの刀は大きな傷が出て失敗となるであろうと思われる。こんな仕事で良く刀工試験に合格したものである。

勘違い

 昨秋松炭を100俵注文したが50俵しか出来なく年明けに納入となっていたが、連絡が無いので電話をすると「出来ています。70.80は有ります」との返事に今日2トン車を借り上げ、今夜明日の引き取り時間を電話をすると実は7.80キロとの事。炭は俵が単位である。昨秋は車で届ける約束で有ったが引き取りに来て欲しいと話は違うし50俵の注文が5俵の目方しかない。全く話が違う。一応注文だから引き取りに行くが経費を入れると岩手産の3倍程になり、おまけに半焼けの松炭との話である。これでは炭焼屋の名がすたる。本当はこんな炭は入らないが金が無いので引き取れないのだろうと思われたくないので引き取るのである。二度と注文はしない。岡山県内の炭屋さんでも真当に取引の出来るのは一軒のみで、生産が注文に追い着かない。
 岩手県にも注文してから4ヶ月になるが松炭は入荷なし。手持ちの松炭も少なく大事に使わなければならない。
 どこかに良質の松炭を焼く所はないものだろうか。松炭が無ければ日本の伝統文化は守れない。

順調

 今日も谷口君が炭切をしてくれる。昨年9月迄は弟子も多く忙しかったが、今年は受験の2名のみ平日作業となり、日中は静かであるが私の鍛錬時の炭切が谷口君1人の負担となり少し心苦しいが、嫌な顔もしないで親方の為に炭切をする。こんな役立つ弟子でなければ親方に刀造りを教えてもらえない。弟子の第一は親方に気に入られる事である。陰日向なく一生懸命に働く姿を親方は黙って見ている。
 彼の炭切のお陰で12キロの皮鉄を鍛え終わる。

松炭

 岡山県内の松炭で鋼10キロを25回の折り返し鍛錬をしたが火力が今一歩で今日の上鍛は岩手県産に切り換える。火力も十分で鋼の沸き具合も申し分ない。松炭は岩手県産が日本一の良質だと思うが注文しても炭問屋に炭が無いので困る。炭の質で刀の出来も左右されるので良い炭が欲しいものである。
 広島県の炭屋さんから松炭が出来た旨の連絡が有り、週末に2トン車で引き取りに行く事にしている。値段は岩手県産と同じであるが炭の質は不明である。
 毎月200俵の炭を使用するので、炭の確保に苦労する。

手紙

 一日の作業を終えて日も没したので谷口君の焼入れを見学。受験も4ヶ月後に迫るので早く覚えてもらいたい。彼も高校卒業後入門なのでもう6年になる。昼は刀の修行、夜は10時迄生活費を稼ぎにアルバイトに精を出す。今時の若者にすれば実に真面目な青年である。6年間一生懸命に学んだ成果が実を結ぶ事を願っている。
 今夜は大高君の父親に手紙を書く。入門9年になるので父親の気持ちも判るが、一度しかない彼の青春時代を無駄に過ごしてしまうより他の道を選んだ方が良い事はずっと以前にも手紙を出した。本人の能力が刀工には不向きな事と努力が無いので、何十年修行をしても刀工になれない事を理解して欲しい。こんな事で精神的ストレスが溜り胃が痛み口内炎もひどく、昨日は病院に行く。

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