刀鍛冶の日々

刀工試験第1日

全国よりの受験者9名、今日は日刀保玉鋼の選別と使用方法の試験と炭切り。審査員は5名と文化庁より2名出向。
夕方には1名が不合格、残った8名により明日より積沸かし、折り返し鍛錬が3組に別れての作業となる。

当伝習所より5名が第1日を通過、不合格となった1名も当方と同じで日刀保玉鋼は使用していないので、使用していない鋼を区別せよと言われても判るはずがない。

2年前も当方の受験生が同じであったので、今年は日刀保玉鋼を買って、自家製の玉鋼との区別方法や日刀保玉鋼を使用して脇差を造らせ、練習を繰り返し行ったので良かったが、不合格者には気の毒でならない。弟子の受験中は気分転換に包丁を造って1日を過す。

「弟子達の 報告受けて 一安堵 明日の健闘 神に祈れり」
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今日一日

赤坂で早朝より刀の火造り、反り付けを終えて長船へ。明日より始まる刀工試験に備えて全員休んでいて火床が空いているので、昨日の岐阜県の砂鉄で鍛えた鋼で剣鉈の素延べを造る。

今日は包丁2本の注文が有ったので、岐阜の鋼と鳥取の鋼を混合して鍛え、包丁の地金を造る。
岩手県の炭は水分を含み、火力が上がらず、苦労して夕方には疲れはてる。

それでも今日で全てが終わり、一段落するので気分は楽である。明日よりは来年受験の谷口君の指導に使う炭と、鋼代だけになるので随分と楽になり、包丁の売上代だけで足りる。

それと試験後に始まる弟子の刀製作の指導の費用は刀の売上代で足りると思う。経済的に厳しかった一年も今日で終わった。過ぎ去った一年を振り返ると満足感で一杯である。

一人でも多く合格して、日本の文化、伝統、精神を受け継ぐ、真の日本人。戦後失われた日本民族の魂を打ち続けて欲しい。

2日前

2年前の刀工試験不合格より火造り一筋に修行したが、どうしても出来なかった弟子が受験2日前になってなんとか合格最低ラインに達した。あきらめずに頑張った結果で良かったと思うし、なんとか合格して欲しい。あと1日練習日はある。

午後は時間が有ったので、昨日吹いた岐阜県の砂鉄を吹いた玉鋼3kgを使って3時間に渡り折り返し鍛錬をしてみせる。これで一年間に受験生に対する指導を終わる。

ガス溶接のサングラスをかけて、強い火を見ない様にしたが両目が痛む。


「玉鋼 打ちて痛む このまなこ 雨音聞きて しばし目を閉ず」

雨の一日

受験準備の出来た弟子はのんびりとしているが、そうでない弟子は最後迄あきらめず頑張っている。
今日は受験生の邪魔にならないように、たたら製鉄の予定で送風機のスイッチを入れるが、モーターが廻らず、電気工事店、中国電気工事店に来て頂き、電柱の工事で通電して11時より砂鉄投入。

夕方迄短時間であったが、岐阜県の砂鉄で炭素量の高い良質な玉鋼が出来る。これは後日山歩き用のナイフにする予定。たたら製鉄で出る1300℃のスラグの流れ出るのを見るので、夜は目が痛む。昨夜からの雨も降り、続き台風2号も接近中であり。

31日の刀工試験迄連日雨の予報、妻の新車も今日納車される。これで又一つ悩みが増える。

カメラの前で

今日は一日折り返し鍛錬、火造り、焼入れの取材を行う。今迄の自分の人生を捨て、刀鍛冶に弟子入りして日中は刀剣製作の修行。夜は兄弟子と供に夜のアルバイトを続け、やっと刀工試験を受ける事になった菊池君。

今回の受験者5人中4人迄が刀鍛冶になるために、2足のわらじをはいて頑張っている。その中でも菊池君にカメラを向けたのは専業の刀鍛冶を目指す意思が強いから彼を推薦した。

一期生の秋山君、二期生の平田、鳴海君に続き今回合格してプロの刀鍛冶に成って欲しいと思っている。刀鍛冶は貧しい。しかし貧しくとも日本の伝統文化、日本刀製作は守らねばならない。
菊池君だけでなく、同程度の受験者も居るが、年齢が高くなるとどうしても生活を考えねばならなく、経済的、体力的な面も出てくる。

刀が好きなのと、刀で生活するのは違うが、専業の刀鍛冶で生きていくのに生活に必要な包丁を造って、刀の注文が来る迄は耐え忍ぶ事も必要である。不屈の信念が有れば、又道も開かれると思う。親方と弟子のインタビューも終わった。あと4日寝ると新しい人生の分岐点である。

赤坂で

長船では菊池君が取材を受けているので、赤坂鍛錬所で注文の包丁を鍛える。今回の岩手県の炭は水分を含んだ炭が多く、火力が上がらない、さりとて多額の金銭を払っているので、捨てる事も出来ず無理して使う。岩手県の炭は優良で今迄この様な事は全くなかったのに。

刀工試験迄あと4日。早く終わった弟子は試験に備えて体調を整えているが、合格に遠い弟子は今だ作業を進める。最後の最後迄頑張ってみるのも人生では大事な事である。



「この朝も 痛みて止まぬ 我がまなこ 痛みこらえて 熱き鉄打つ」

銘切り

昨日に中心仕立ての終わった刀二振りを、平田君が持って刀に銘を切るが、目がかすみ非常に困った。
弟子に持たせての銘切りは始めてなので、全員が注目。戸外で銘切りをすれば明るいし、メガネも変えたので大丈夫と思っていたが、全く見えず。長時間見つめたのか、夜も痛みは止まず。


今日より某放送局の取材始まる。伝習所で昼は刀を習い、夜は生活の為、アルバイトをしながら、やっと刀工試験を迎えた弟子の日常と試験結果が出る迄の取材である。

参拝

金屋子神社に月参りの参拝に出掛ける。中国山地はもう田植えも終わっている。昨日から降り続く雨も山々の木々をぬらし、梅雨間近を思わしむ。
今月も元気で参拝出来た事を感謝し、合わせて目の痛みも少なくなって仕事が十分に出来る事を祈願。

病院長より手術しても目の痛みは治りませんと、医学から見放された以上は神仏に祈るしかない。鍛冶場で火を見なければ目は殆ど痛まないので、仕事量を少し落として、少しでも永く刀を打ち続けたい。今は1週間後に迫った刀工試験に一人でも多くの合格者を出して私の負担を少しでも軽くしたい。

来年の受験者谷口君を残して、来春迄に刀造りの全てを教え終わりたいと思っている。
体力的には十二分に自信があったが、糖尿病と白内障により一番大事な目に傷害が出るとは思いもよらなかった。


「この月も 社に参り こうべ垂れ 熱き思いを 願いまつりぬ」

ヴィッセル神戸

朝礼前電話でM先生より、元ヴィッセル神戸監督バクスター氏が来日したので、日本刀製作を見学したい旨の連絡あり、M先生御夫婦とバクスター元監督と次女ナタリーさんがスェーデンより来所。
平田君が横座に入り、受験生が向槌で折り返し鍛錬、そして脇差の焼入れを御見せする。

昼食後スェーデン人から見た日本人や社会の違いなどを質問して話に花が咲く、楽しい一時を過ごし、今夜関空よりスェーデンに帰るので、御土産に私の包丁を御買い上げ頂く、初めて北欧に私の包丁が渡る。
今年はフランスに次ぎ2本目の海外行きである。うれしい。

午後2時過ぎに某大学院考古学研究所より古代の鉄器製造に付き見学、質問に来所。5時過ぎ迄折り返し鍛錬のあとに遺跡より、出土した鉄器の制作方法に付き、X線検査の結果や現代の鍛冶技術から見た制作方法や実演を見て頂く。
考古学の専門でないので、私の所見を述べるにとどまるが、少しでもお役に立てば幸いである。

無料公開の日

合否は別として一応受験準備は終わったので、通常の無料公開による古式折り返し鍛錬に入り、受験生4人が横座1名向槌3名となり、ふいごを吹き、折り返し鍛錬を行う。

大阪より3名、広島より3名の見学者が訪問、広島よりは両親と小学校の2年生の子息。剣道を習っているので、非常に礼儀正しく刀鍛冶になりたいと述べる。

今頃の小学生が、これほど自分の将来にはっきりとした意思を表明したのは始めてであり、深く感銘。この様な子供がもし伝習所が続いていたなら入門して、日本の文化伝統を継いで欲しいものである。

今日文化庁より鳴海、平田両君に対して6月20日より短刀製作承認が出る。それ迄に刀匠の証書が届く事と思う。これで伝習より直系の弟子3名が刀匠となる。刀工受験者5名が一人でも多く合格して欲しいが、個人差は如何ともしがたい。

あと9日しか残っていない。合格を目指し、頑張って欲しい。


「ふいご吹き 鋼沸かする そのさまに 適性おもい 不安を感ず」

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