刀鍛冶の日々

炭入る

小雨の中県内の炭屋さんから150俵の炭が入る。あと3日分程の炭しかなく困ったなと思っていたが、炭の山を見ると安心する。

その後某放送局よりのアナウンサーが来訪して昼過ぎ迄古式鍛錬、包丁の火造り等を見て頂く。場合によっては全国放送となる。今日は目の手術4週間目の検診があるので、3次に仕事を終え、これから病院へ行く事とする。
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心を鬼にする

来春の刀工受験迄あと8ヶ月を切っても、一向に技術の上達のない弟子も居るので、今日は朝から声がかれる程に怒鳴り通しである。
技術向上の努力心と変なプライドで、他人に技術指導を求める事が出来ない、謙虚な心がない事が技術力が向上しない事と思う。

今日よりは弟子8名全員に対して厳しく接する事に決めた。そうでなければ刀工試験にも合格しないし、又刀工試験に合格した者、そして今刀工として資格有る者も刀を専業として、刀鍛冶として生きては行けない。

この30年間で7名の刀工を卒業させたが専業刀工は1名しか居ない、今日よりは心を鬼とする。去る者は追わない、残る者のみを育てる事とする。

出費

休日の今日は谷口君が包丁を鍛える予定であったが、宗近君が急遽鍛錬をしたいとの事で、谷口君の包丁つくりを午後にして宗近君が鍛える。中々上手になって来る。

休日でも受験生は火造りの練習。大高君もこの一年余り火造りで止まっている。試験は決められた時間に、その工程を完了しなければ合格できない。
他の弟子は次々と合格するが、彼だけは取り残されているので、本人以上に悩む。

午後は車の修理が出来た旨連絡が有り受け取り、明日の使用する炭を積んで帰宅、トラックで運ぶ連絡が有り信用できる炭焼の方であるので待ち遠しい。

炭代を支払えば今月の出費合計は100万円を越える。親方を続けるのは本当にしんどいものである。

感謝

8月末の猛暑日に9月始めの白内障手術がうまくいって、元通りのように作刀出来る事を祈念して参拝する。

あの暑い日から一ヶ月を経て、彼岸花の咲き乱れる出雲路へ空気の澄んだ境内を、右目にレンズを入れて今だ痛むが、視力が0.5まで回復して車の運転も出来るようになり、徐々ではあるが作刀に復帰しだした。

月一回の参拝に今月も金屋子神社に来る事が出来た。多くの弟子を育てながら今月も、なんとか一ヶ月を乗り切る事が出来て、参拝出来た事に感謝して頭を下げる。あわせて一日も早く目が完治する事をお願いして帰宅、帰り道は大雨となる。

素伸べ 菊池

試験まであと七ヶ月と迫り、本日は素伸べの練習。先日までの『だいたい、ある程度、約々』な素伸べではなく、キッチリとした素伸べを要求される。
刀を作る工程では削りを最小限に抑える必要がある。削って形を作ったのでは造り込みで入れた心鉄が出てきてしまう。
 焼入れの前にせん、やすり、砥石などで黒皮を取り除き、細かな凸凹を取るために若干の削りはあれども基本、形は鎚で叩いてきめるものである。
そこで素伸べ、が重要になってくる。
 焼き入れ前のせん、やすり掛けを簡単に済ませるためには火造りがしっかり出来ている必要がある。火造りがしっかりしていれば黒皮…鉄を熱し
たときに鉄の表面に出てくる酸化鉄の膜…を軽くせん、やすりでそぎ落とすだけで終わるが火造りがしっかりしていない場合、削る箇所が増えて
時間や労力が多くかかる。火造りをしっかりとする為には素伸べがしっかり出来ている必要がある。火造りで刀の形を造っていくのにも限度があり
叩く場所に肉が残っていれば叩いて打ち出す事は出来るが無ければ当然、打ち出せない。
 つまり素伸べをどれだけ丁寧に出来るかでその後の作業時間と労力が大きく変わってくるのである。これは制限時間が決まっている刀工試験では
重大な要素になってくる。
 さて、私の素伸べである。先日までの『だいたい、ある程度、約々』な素伸べはすぐに出来るのだがこれは火造りで素伸べの欠点を直すやりかた。
火造りやその後の事を考えるなら素伸べの欠点は素伸べの時点で直しておくべき。しかしながら、私の素伸べはまだまだ未熟で先と元の大きさを決めて
真ん中の肉を叩いて抜いていくのだが、いつも抜きが足りず真ん中の肉がふくれているような状態。自分では真っ直ぐになっていると確信して
親方に見てもらうがなかなかOKをもらえない。「ここにまだ肉が残っているだろう」そう言われて見直すと確かに肉が残っている。
親方に指摘してもらえば欠点をみつけられるが自分自身で長時間素伸べを眺めていると真っ直ぐが良く判らなくなる。
また、当然ながら叩きすぎて細くなってしまったら先と元の寸法を合わせ直さなければならず、その辺も充分注意が必要だ。
『コバ』(縦の面)と『ヒラ』(横の面)の関係も気を付けなければならない。コバの肉を落とすにはヒラを叩かねばならず、さすれば当然
ヒラ肉が広がり、線もゆがむ。ヒラ肉の広がりと線のゆがみはコバを叩かねばならず…と、あちらを叩けばこちらが立たず、こちらを叩けば
あちらが立たず、ルービックキューブで最後の面が合わずに今までそろえた面を崩していくような、そんな感じ。
 悪戦苦闘しながら昔、刀鍛冶に憧れた時の事を思い出した。囲碁の碁盤を作る職人さんは碁盤の目を引く時、刀を使って線を引くそうです。
刀の刃はそれだけ真っ直ぐであるという話ですごいなあ、と子供の時分感じたものです。その憧れたものになろうというのだからやはりこれは
努力が必要ですね。

秋風も吹き出したので今日は朝から砂鉄吹き。
 昨日切揃えた6俵の炭と東北産マグネタイト(磁性)とイルメナイト(非磁性)の砂鉄、計50㎏を7時間かけて吹き7,5㎏の鋼を得る。
 出来た鋼は大変硬く、粘りがあり、申し分なし。東北産砂鉄も慣れて来て調子も良く梅雨明け以来70日ぶりのたたら製鉄であった。私も目の調子が悪く弟子にたたらを任せていたが、これでは鋼が出来ないと思い時折、操業を手がけるが調子悪し。
 昨日、某銃砲メーカーより砂鉄の提供を頼まれて差し上げる事としたが現代の製鉄知識だけで和鉄が出来ると簡単に思われては困る。長い試作期間を要さなければ絶対に出来ない。だから刀鍛冶でも自ら玉鋼が出来ないのでメーカーから玉鋼を買うのである。たたら製鉄の見学を申し出て見学に来ないがやれるものならやってみろと言いたくなるが結果が出るまでは御手並み拝見と行こう。
 今日で3日、妻も居なく1人暮らしで気楽であるが目が不自由でなければもっと気楽である。明日の朝食の準備をしながら明日の作刀を思う。

大雨の日

暑さ寒さも彼岸迄と昔の人はよく言ったもので、昨日迄の猛暑も夕方よりの大雨が今日も昼迄振り続き、やっと涼しくなり、鍛錬所の室温も20℃となり石原君が、一日中火造りをする。
これで来年の受験生も今迄の遅れを取り戻す事が出来る。

私も早く刀を作りたいが、今だ目も痛み10月にならなければ無理と思われるので、当分は指導のみの毎日と思う。

信用

朝病院に居ると炭屋さんが、予告なしに炭を突然に持って来て、置いて帰ったと弟子から電話が有る。
病院で処置を済まして鍛冶場に行くと炭が山積み、おまけに規格外の炭で岩手県産の炭よりはるかに劣る。昨年もこんな炭は使えないと言ってあったのに、非常に腹が立つので電話をして返品する。

昨年10俵の見本は良かったので70俵注文したが、70俵は規格外品、良い炭を1月に納入の約束が今頃になる。
人間は正直でなければ付き合いができない。

看板効果

昨日も今日も看板を見て来ましたと言って、鍛錬所に来客有、作刀工程を説明して実演を見学して、日本刀の素晴らしさを語り和鉄の優秀性を知って頂く、今日は県内の炭屋さんから炭も入り一安心。しばらくは仕事が出来そうである。電柱の看板を取り付けたので出し入れがなくなり手間もはぶける。

今日も包丁が売れる

9名全員が一時間の割り当て時間を使っての仕事がこなせる。弟子全員にみっちりと仕事をさせたいが、今の状態では致し方ない。

昨夜から泊り込みでT氏が見学に来て注文を頂く。又日中には広島県よりの御夫婦が包丁を御買上、今月は看板が無い割りには包丁がよく売れたので、炭屋さんに炭の注文を出す。
鍛冶屋にはいつも鋼と炭が高く積まれていなければ、十分な仕事が出来ないものである。
彼岸も近づき、あれ程暑かった日中も随分と涼しくなり、全員の仕事がはかどる。

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